ユタラプトルの備忘録

主に趣味関連の雑記帳。たまにお気持ち表明。

Fate/stay night+hollow ataraxia 復刻版を遊んだ感想(1)

 2019年5月末、TYPE-MOON公式からこんな告知があった。

  長らく復刻されなかったPC版stay nightとhollow ataraxiaを再度発売するという(追記:実は2014年にも発売から10年を記念して復刻販売していたのだが、この記事を書いてからそのことを知った。言うほど長らくというわけではない。単なる調査不足です)。

 僕はその3か月ほど前、Fateの世界に入門するためにiOS版のstay night Realta Nuaで遊んだ。その完成度の高さに感動しつつも、(自分がもっと早くにオタクとして生まれていればPC版のstay nightからFateの世界に入れたのになあ・・・)と無茶な望みを抱いていた。

 もちろんRealta Nuaに不満はなかった。初めのFateルートだけなら無料でプレイでき、残りのUBWルートとHeaven' Feelルートはそれぞれ1600円でプレイできるという良心的な価格設定は驚きだった。何しろ全部合わせてもソシャゲの一般的な10連ガチャを引くのに必要な課金額ぐらいしかお金を要求されない。なんという安さ。一度見聞きした一枚絵やBGMは何度でも再生できたり、選ばなかった選択肢をフローチャートで確認できたりと、初めてこの種のノベルゲームに触れた自分には初めての体験ばかりだった。

 しかしRealta Nuaと元々のPC版には決定的な違いがある。前者は全年齢版だが後者はアダルト版だ。当然えっちなシーンはカットされるか問題ないよう改変されるし、微妙な言葉づかいも編集が入る。原典を体験したければ、プレミア価格で初回盤を買うしかない。しかも買ったところで今のパソコンが古いディスクを読み込んでくれる保証はない。こりゃ参った(追記:2014年版のDVD-ROMならおそらく大丈夫かと思われる。おそらく)。

 だから冒頭の告知はとてつもなく魅力的なものだった。これを買えばえっちな・・・・じゃない、原典のstay nightが味わえる。自分が到達していない未知の部分があるはずだ。それにstay nightの続編というhollow ataraxiaもついてくる。

 購入してからインストールするのに多少まごつきながらも、なんとか8月中に3ルート全てのエンディングを回収することができた。以降はstay night全体の感想をこの記事で書き、3ルートそれぞれの感想は別々の記事に書く予定だ。(hollow ataraxiaはこの記事の作成時はまだ攻略中。バゼットさんの見た目と性格が筆者の好みに刺さりまくっている)

 

・結局stay nightってどんな話だったのか

 この3ルートに共通するあらすじを書くとすれば、

「『正義の味方』を目指して亡き父の後を追い魔術修行をしてきた高校生・衛宮士郎が、万能の願望を満たす聖杯をめぐる魔術師どうしの戦いに巻き込まれたことから、幾たびの出会いや戦いを通して大きく成長する話」

だと思う。また、3ルートの共通原則は

「過去に起きたことは変えられないし、すべての人を救うことはできない。しかし理想を愚直に追い求めて誰かの味方になろうとするのは決して間違いではない。一度誰かを救うと決めたなら、何があってもそれを完遂せよ」

だと僕は受け取った。プレイヤーがとった選択肢によって士郎が行く道が分岐していくゲームだから、ルートごとにどうしても犠牲にせざるを得ないものがある。Fateルートではアーチャーエミヤは答えを得られず消えていき、かといってUBWルートでは間桐家の闇を目にすることはできず(Fateルートでも同じなんだけど)、HFルートではこれまで士郎が縋り付いてきた『正義の味方』を手放すことになる。

 でも、stay nightをプレイする我々は士郎と違い、すべてを見渡し記憶に残すことができる。道を選ばせた以上それぞれの結果を士郎の代わりの目になって焼き付けなければならない。Realta Nuaのときも常々そう思っていた。

 

・3ルートすべてを見たうえで完成するstay night

 stay nightを人に勧めたいときに困ることがある。

(正直この3人の中からピンときた子を選んでもらって、その子と士郎が積極的に関わるルートから見てくれたらいいんだけど、話の都合上どうしてもセイバールートから先に見てもらいたいんだよな・・・・・)というやつだ。Realta NuaではFateルートをやらずとも先に課金してUBWルートやHFルートをプレイできるのでその辺の都合は別に無視しても構わないが、3ルート全てを見たうえの感想ではFateルートを最初にやるのがゲーム的な正しさを感じるのだ。(面倒くさいオタク特有のこだわり)

 このゲームはFateルートで士郎がセイバーと突き進む聖杯戦争の流れをプレイヤーに体感させ、UBWルートで士郎とアーチャーの関係を精算し聖杯の真の正体を明かしたうえで、HFルートで桜の過去と凛との因縁、聖杯戦争の裏側を目撃させる。話を順番に掘り下げていき、前述の「すべてを救うことはできないが…」と同様、3ルートすべてを見ることでようやくstay nightの全容が見渡せる仕掛けだ。「えっこんなこと前のルートじゃ分からなかったぞ!」とプレイヤーを驚かせてくれるのもこのゲームの魅力だから、決まった攻略順序を強いられるのも納得できる。しかしこのゲームに初めて触れる人にそれを理解してもらえるよう、うまく魅力を伝えるのがまだ僕には難しい。これはネタバレを含む感想だから、新規の人を引き込むのにはあまり役に立たない文章だ。もしstay nightを知らない人がこれを見たことで興味を持ってもらえたら、それはそれで幸いだが。

 

・肝心のアレ!えっちなシーンは実際どうなんだ

 復刻版を買った目的の半分はアダルト版でしか見られない部分を見ることだ。さすがに肌面積の高い一枚絵をスクリーンショットに撮ってOneDriveに保存したりしてうっかりMicrosoftアカウントをBANされる原因を作ってしまっては困るので、この記事では直接取り上げないが、Realta Nuaと違ってどんなシーンがあったのかは説明したい。

Fateルート

 十一日目、疲労したセイバーへバーサーカーを倒すために魔力を渡す手段として凛を加えた3人の・・・・と、十二日目のセイバーの風呂を士郎がうっかり見てしまう際の湯気が消えているところ、十四日目のギルガメッシュ戦後の魔力回復も兼ねた仲直りックスがアダルト版限定のシーンだった。ちなみに七日目にも士郎は脱衣中のセイバーとうっかり遭遇しているが、このときのセイバーはバスタオルを巻いていない。

UBWルート

 十五日目、固有結界の発動に必要な魔力を凜から士郎へ渡すための・・・・というシーン。3ルート中最も熱い展開だったからかそれほどRealta Nuaとの違いはなかったと思う。しかし内容は士郎と凛の関係の尊さを如実に表している(もっといい言い方なかったのか)(語彙力)。

・HFルート

 ご存じのとおり3ルート中最も変更箇所が多い。

 まず桜が臓硯による魔術修練と称した性的虐待の表現がより露骨になっている。「私、処女じゃないんですよ」とか「清らかな処女ではなく、男を知る女魔」とか。あと修練場の蟲がどう見ても男性器に近い見た目になっていたりする。間桐家で冷遇されていたのが自分の方だったと気づいた慎二が容赦なく桜を犯したことを独白する部分もあった。十五日目の最終局面で何らかの選択肢ミスがあった場合、凛を下した桜が自身が受けた過去の仕打ちを凜に’’体験させてあげた’’際の表現にも処女云々の言葉がみられた。

 五日目に士郎がみた悪夢の中身は様子のおかしい凛との学校ックスに変わっており、Realta Nuaの凛と美綴の怪しげな交差と吸血の方が個人的に好みだったので少し不満だった。七日目に学校の屋上で凛と相談する際、握手後の士郎の慌てぶりから色々察した凜の「衛宮くん、好きな子で自慰するタイプでしょ?」はRealta Nuaにはなかった。

 そして刻印虫の暴走を鎮めるため桜と士郎が体を重ねるシーンが九日目、十日目、十一日目と3回もある。日ごとに二人とも壊れていくので確かに期待したえっちなシーンとしては十分だが、正直退廃的すぎて正視できない。信念と桜の救済を天秤にかけた士郎の葛藤、士郎からの愛を得ても満たされない桜の飢え……それらを内包した二人の交わりをただえっちなシーンを見たいだけで消化するのが不誠実に思える(面倒くさいオタクのこだわりその2)。この陰鬱さを乗り越えて到達するエンディングこそHFルートの魅力でもあるが、好きになれない人もいるのは理解できた。

 

・まとめ

 アダルト版にしかない表現を残したstay nightが本来のstay nightだと、ここで言い切ってしまうのは正しくないと思う。エンディングすべてを回収すると見られる士郎とセイバーのラストエピソードやHFルートのオープニング、士郎と言峰の互いの譲れないものをかけた殴り合いの絵、これらはアダルト版には無くてRealta Nuaにはある。どちらもstay nightの違った側面を映すものであり、手に取る人によって違った価値を置かれるだろう。両方を体験した僕は、両者の違いを理解して高さが同じ別々の思い出の棚にしまっておくことにした。復刻版stay nightは過去に埋められた表現を掘り出して味わいたいというオタクの欲求を十分に満たしてくれた。

 

 繰り返しになるが今後3ルートそれぞれの感想を3つの記事に分けて書きたいと思う。