ユタラプトルの備忘録

主に趣味関連の雑記帳。たまにお気持ち表明。

Fate/stay night+hollow ataraxia 復刻版を遊んだ感想(2)

 前回の感想記事から続いて、hollow ataraxiaの方もクリアしたので感想を書く(ネタバレを多く含みます)。stay nightのマスターやサーヴァントたちが過ごす’’もしもの日常’’を垣間見ることができる今作は素晴らしかった。唸る考察などはすでにたくさんの方が書かれているので、ここでは個人の好き勝手な感想を主に新キャラクターのバゼットとカレン、アンリマユについて書こうと思う。そんなに長くはならない。

 

バゼット・フラガ・マクレミッツ

 一言でいえばとんでもなく真面目で不器用な人。人並みの楽しみが見いだせずただ生きているだけでも息苦しい。物事を1か0かで捉えがち。居場所を求めた魔術協会でも厄介な役を押し付けられただけ。誰かに認められたい欲求はあるものの、一人でやっていく心の強さを持った言峰綺礼には憧れてしまう。第五次聖杯戦争ではせっかくのクーフーリンを召喚し二人でよろしくやっていたところを、信頼していた言峰にだまし討ちされリタイア。生を諦められないまま享年23歳・・・・・・となるはずだったのだが、聖杯の中に潜むアンリマユにその意思を拾われ、彼と契約を結び繰り返される4日間の聖杯戦争へ身を投じる。

 この通り痛々しいほど気の毒なキャラクターなんだけど、そこが非常に気に入った。終盤アンリマユとの対話で再びこの息苦しい世界に戻ってもがきつつも前進することを選んだところに、彼女の変わらない努力家な一面をみた。これからの人生でバゼットが何か得るものがあってほしい。(あと悪い男にまた引っかからないでほしい。)

 

カレン・オルテンシア

 スカート履き忘れてる人・・・もとい、自己犠牲をいとわない徹底した信仰心をもつ修道女。悪魔を感知する被虐霊媒体質により聖堂教会にて「天職」を得た人物だが、その出生から言峰綺礼の実の娘だと噂される。対話を通じて人の弱みを見つけて傷を開くさまはまさしく言峰の血が表れている。あれ絶対愉しんでやってるわ。それでも信仰心は本物で、体質の都合上傷を負うのは避けられないのに代行者としての役目を果たし続けている。この辺もまた言峰と同じで、ちなみに聞かれたことには真摯に答えるのも彼とそっくりだった。言峰と違う点を挙げるなら、思っていることがいくらか読み取りやすいことだろうか。表情差分が多くて助かる。アンリマユ相手だと硬い表情を崩される様子がとても良い。

 カレンからすれば彼は大荷物を背負ったいじめがいのある悪魔で、扇情的な服の話題から発展しあからさまに突き放された仕返しに、コピー元人格(士郎)の徹底した無欲さに指をさす。カレンとの対話が、アンリマユが士郎の日常から脱することを促し、最終的にバゼットを実世界に送り出す手助けになるのだ。ゲーム的にはプレイヤーに間接的なヒントを与える役割。うまい仕組みだと思った。

 

・アンリマユ(アヴェンジャー)

 第三次聖杯戦争で呼ばれたことで聖杯の中に宿ってしまったモノ。今作のヒロイン。

 stay nightでは言峰が生涯をかけてでも誕生させたかった「命」として登場し、どのルートでも士郎たちの手によって完全な現界を阻止されたが、今作では死にかけのバゼットの強い生への執着に興味を持ち、第8のクラス「アヴェンジャー」として偽りの聖杯戦争を引き起こした。

 アンリマユの元となった本来の青年の人格がすでに無くなっており、契約した相手に応じて別の誰かの人格を模倣して活動する。バゼットと契約した際は衛宮士郎の人格をコピーした。しかし、「この世全ての悪であれ」という人々の願望の集合体と士郎の人格が合わさったことにより、バゼットを困らせて楽しむ全く新しいアンリマユ´が現界した。士郎の歪な人助け精神を「下らない生き方」だと真っ向から否定し、己の欲望に忠実に生きる。自分がどんな過程で生まれたかを熟知しているからか、人間がもつ悪性、他の誰かに自分の内悪を預ける弱さを道理として受け入れている。すさまじいまでの達観した人となり(?)だが、同時に人間の善性も認めており、生きる辛さと闘いながら努力してきたバゼットの味方についた。あれだけ人間の悪を背負っていながら、それでも人間の為すことには意味があると断言できるスゴイ奴。「ロックスターみたい」(カレン評)。

 夜中の聖杯戦争バゼットと共に行動する中、昼間は衛宮士郎として過ごし日常を体験していた。そうしてカレンとも対話を重ねていく。「なんでもかんでも受け入れる芸風もつまらない」「人並みの幸福は、そんなにつまらない?」・・・・・・バゼットの力になろうとしたのは、士郎の愚直で歪な生き方に少なからず影響されていたからだと、本人に自覚させたのがカレンだった。カレンはアンリマユを導き、アンリマユはバゼットを導く。バゼットとカレンの間に位置するのがアンリマユで、それが彼を今作のヒロインと呼んだ理由だ。

 この4日間の日常は、アンリマユに本来与えられるべきだった人並みの幸福で、それに浸り続けることが彼にとっての救いになるとバゼットは言った。それを投げ打ってでも、バゼットが自分を誇りに思えるよう努力する道がある実世界に送り出す方を選んだ。stay nightであれだけ暴れまわった聖杯の中身が、バゼットとカレン、衛宮士郎という触媒を得てこんな結末を生み出すなんて。

 

・まとめ

 hollow ataraxiaは「人の悪を一身に背負ったちっぽけな悪魔が、バカがつくほどのお人よしに憧れて、ドS修道女との対話を経て、不器用な迷える子羊の味方になる話」だと僕は受け取った。「結果はどうあれ、自分の為に進むヤツが好きなんだよ」というアンリマユの最後の告白が、ある意味今作のテーマを表していると思う。言峰は苦悩の末自身の「積極的な肯定」にたどり着いた。それを追う今作の新キャラたちも、「自分の行いに自信を持つこと」が正しいのだと訴えている。ちょっと元気が出た。